筋肉が力を発揮する仕組み

筋肉が収縮することで筋力を発揮することは知っていても、その仕組みについて詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。筋力発揮の仕組みについて理解することは、どのようなトレーニングが効果的なのかを考える上でも非常に重要です。

この記事ではその仕組みについて詳しく解説していきます。

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筋肉は縮む方向にしか力を発揮できない

実は筋肉というのは縮む方向にしか力を発揮することができません。したがって、筋肉が自ら外に向かって伸びるということは有り得ません。

しかし、それだと筋肉は一度縮んだら縮みきったまま戻らないことになってしまいます。それでは困ったことになってしまうので、それぞれの筋肉は自分を引き伸ばしてくれるパートナーを持っています。このパートナーとなる筋肉のことを「拮抗筋」と呼びます。

例えば、上腕二頭筋に対する上腕三頭筋、大腿四頭筋に対するハムストリングスなどが拮抗筋です。筋トレの場合は重力やバーベルの負荷が筋肉を引き伸ばしてくれるので拮抗筋はほとんど働いていませんが、日常生活やスポーツでは拮抗筋の働きによって思い通りの動作を行うことができているのです。

運動単位とは

筋力発揮の詳しい説明に入る前に、まず運動単位について理解しておかなくてはなりません。筋肉はそもそも筋繊維が集まって束状になったものです。筋繊維は必ず神経と繋がっており、それを伝わって指令が届くことにより動きます。ただし、1本の神経が1個の筋繊維と繋がっているわけではなく、1本の神経が末端で枝分かれして、複数の筋繊維に繋がっています。

この1本の神経と、それが支配する筋繊維の集団をまとめて「運動単位」と呼びます。筋肉の中にはこの運動単位がたくさんあり、それぞれが神経からの指令を受け取ることによって色々な動きが可能になります。

小さな運動単位と大きな運動単位

運動単位には様々なサイズがあることが分かっており、少ないものでは数十本、大きなものでは2000本以上の筋繊維で構成されてるものもあります。一般的に、含まれる筋繊維の数が少ないものを「小さな運動単位」、多いものを「大きな運動単位」と呼びます。

筋繊維には速筋繊維と遅筋繊維がありますが、基本的に速筋繊維は大きな運動単位遅筋繊維は小さな運動単位に含まれます。速筋繊維では大きな力をドーンと発揮するので、1つの指令で多くの筋繊維を動員できた方が効率が良いためでしょう。逆に、遅筋繊維の場合は姿勢の保持や細かい作業など比較的小さな力を発揮することが多く、運動単位も小さくなっていると考えられます。

自分の意思では本当の最大筋力は出せない

筋肉の中で全ての運動単位が同時に使われるとき、筋肉はそのポテンシャルを出し切って最大の筋力を発揮することができます。しかし、本人は最大の筋力を発揮しているつもりでも、実際には脳が無意識に少しブレーキをかけてしまいます。これを「中枢による抑制」といいます。

中枢がかけるブレーキのレベルはどれくらいなのかについては様々な研究がなされてきました。6割か、7割か、など様々な議論がありますが、最近では「実は9割ほどは使えているのではないか」という考え方が主流になっています。

真の最大筋力を発揮するためには

9割ほどは運動単位を使えているということは、残り1割の運動単位を動員できれば真の最大筋力を発揮できるということです。そのためには中枢による抑制をなんとかして外してやる必要があります。いわゆる「火事場の馬鹿力」がまさにそれで、ヒトは危機に直面することで中枢の抑制が外れて普段より大きな力が発揮出来るようになります。

他にも、スポーツの現場では「シャウト効果」によって筋力発揮を高める手法がよく用いられます。これは大きな声を出すことにより、中枢の働きを変えてしまおうというものです。シャウト効果については実験でも筋力が上がるということが確かめられています。

そして実は筋トレによってブレーキを徐々に弱くできることがわかってきています。中・長期的なスパンで最大筋力を高めるためには、重い重量を使った筋トレを繰り返すことが有効です。最大筋力が競技の結果に直結するパワーリフティングやウェイトリフティングの選手では、中枢の抑制は限りなく弱くなっています。

小さな運動単位から大きな運動単位へ

大きな力を発揮するとき、最終的にはほぼ全ての運動単位が使われますが、その際サイズの小さな運動単位から順に使われていくということが分かっています。これを「サイズの原理」といいます。

サイズの小さな運動単位というのは主に遅筋繊維です。そして速筋繊維であればあるほど運動単位のサイズは大きくなります。つまり、サイズの原理とは「力を発揮するときはまず遅筋繊維から先に使われ、速筋繊維は後回しになる」という仕組みのことなのです。

ただし、ジャンプ動作やスタートダッシュなどの瞬間的に大きな力を出す場合は例外です。また、エキセントリック収縮をしているときも速筋繊維が優先的に使われます。ですが筋トレのように動作速度をコントロールしながら大きな力を発揮するときにはサイズの原理が当てはまります。

速筋繊維を鍛えるには

筋肥大のポテンシャルが圧倒的に高いのは速筋繊維です。しかし、筋力を発揮するときはサイズの原理により遅筋繊維から順に使われていくため、軽いものを持ち上げたところで遅筋繊維しか使われません。筋肥大のポテンシャルが高い速筋繊維を使うためには、ある程度重いものを持ち上げる必要があります。

筋トレにおいては、負荷として少なくとも65~70%1RM(20回以上は反復できないぐらいの負荷)は必要です。このくらいの重さであれば持ち上げる際に速筋繊維を動員することができます。ある程度の重量を扱って速筋繊維を動員し、その上でしっかりと疲労させるのに適したやり方こそがスタンダードな10RM×3セットのようなトレーニングなのです。

もう1つの手段としては、「限界まで遅筋繊維を疲労させて無理やり速筋繊維を働かせる」という方法があります。この方法の例としては加圧トレーニングやスロートレーニングなどの超低負荷でのトレーニングが挙げられます。

どちらの方法でも速筋繊維を肥大させることは可能ですが、「誰でも簡単に始められて確実に効果を得られる」という点で、やはりスタンダードな前者のようなトレーニングをおすすめします。

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